これは私ではなく、2つ下の妹①の留学失敗談です。
これ以降は妹の文章がベースになっています。
はじめに
大学が手配してくれる短期留学プログラムに参加して、ド派手に迷子になった時の体験談です。
今回は第四話です。はじめのお話はこちらから↓
前回の第三話はこちらから↓
今回は三日目の出来事を書いていきます。
三日目の登校
アセルヒトリノ夜
「疲れが取れていなくても、どんなに恐ろしくても、朝は平等にやってくる」
上の文は当時私が書いていた日記から引用しました。
追い詰められて中二病が覚醒していく様子をお楽しみください。
とにかく、私は学校に行くのが怖くなってしまって、ただでさえ疲労困憊だったのに眼が冴えちゃって、夜に全然眠れませんでした。
そして次の朝。
その日もホストマザーは一生懸命学校までのルートを説明してくれたんですが、その説明は毎度のことながらたくさんあるルートを絡めて喋るので、全然理解できません。
でも「OK?」と聞かれて「ノーオーケー」と返しても、同じ説明をもう一度受けるだけだし、説明を何度も聞くごとにホストマザーの顔がやつれていくのでやめました。
ホストマザーは普段午後8時には寝ているらしいのに、私に合わせて連日夜更かしをしたせいで疲れていたみたいです。
どんどんホストマザーの顔にも疲労の色が浮かぶので、申し訳なさでいっぱいでした。
薬局のパート?が仕事のようで、朝の5時には家を出るらしいんですが、私のことが心配でその日は6時まで家に残って世話を焼いてくれました。
立地は正直最悪でしたけど、ホストマザーにはかなり恵まれていたと思います。
他の人の話を聞くと、ご飯は毎回冷凍食品、寝るときに音を立てると叱られる、髪の毛が部屋に落ちてると注意されるとか、そういう家庭もあったみたいです。
余談になりますが、私の参加したプログラムでは、ホストファミリーに不満があって、ステイ先にそれなりの事情があった場合、追加料金をいくらか払えばステイ先が変更できました。
ただ変更先の家庭もランダムなので、ガシャって呼ばれたりしてました。
留学生ソシャカスばっかりじゃん
グーグルマップずっと付けっぱなし作戦
そして登校!
二度も散々迷子になったので、「道に迷っても余裕を持って登校出来た方がいいわ」と、ホストマザーに勧められて、昨日より2時間早く家を出ました。
そんな感じで相変わらずよく分からないまま家を出た私でしたが、昨日友達から教わった “Wi-Fiがない人間の必勝法” を実践していたので、それなりに自信はありました。
それは、Wi-Fiが使える環境下でグーグルマップの地図を表示しておけば、Wi-Fiがなくなっても位置情報は使えるから、マップ上の自分のアイコンがリアルタイムで動いてくれる、というものです。
名付けて「グーグルマップずっと付けっぱなし作戦」です。
今までの作戦は全部失敗してるのに、なんで自信満々なんだ?
家でグーグルマップを既に開いておいて、それが閉じないようにスマホを触り続けました。
しょっちゅう迷うバス停までの道も、リアルタイムで動く地図のおかげでその日は迷わずに進むことが出来ました。
そしてバスに乗り、一回目の乗り換えは成功!やっぱり朝は結露がまだマシなので、外の景色が見えるから降りる駅が判断しやすいです。
そのせいでちょっと自信がついたこともあり、前日ロクに寝てなかったせいで疲れが溜まっていたこともあり、緊張が少し緩んだ私は、何と寝落ちしてしまいました。
時間にすると5分も寝ていなかったと思いますが、目覚めた時にはスマホの電源が落ちていました。
慌ててスマホを付けましたが、マップが完全に消えています。
「グーグルマップずっと付けっぱなし作戦」失敗です。
アホの極み!
いいですか皆さん、世の中には「こんなことも出来ないのか」という人間がいます。
私がそれです。
ちなみに、次の日に気付いたんですけど、この時点では別に乗り過ごしたわけでも何でもないんですよね。
私が通う大学の最寄りは、起きてから10分後くらいに通過するバス停でした。
ですが、もうメンタルが「乗り過ごした」にシフトチェンジしている私は、どこか適当な場所で降りて、乗り換えて、自分が元いたバス停にとりあえず戻ろう、という考えで支配されていました。
私を責めないでほしいんですけど、この大学の最寄りのバス停、アナウンスもなければ目立った建物もなく、結露で窓が曇る中で、大きめの茶色い建物(大学)を見つけ出して降りますボタンを押さないといけない、最後にして最大の難関なんです。
今にして思えば、あんまり早い時間に行ってしまったから、他に日本人学生がいなくて逆に難易度が上がっちゃってたんですよね。
他の学生に合わせることも大切です。
あと、諦めないで「どこどこ大学に行きたいんですけど」とバスの運転手とかに聞けばよかったです。
諦めたらそこで試合終了です。
しかし、そのバス、進めど進めど、全然大きなバス停に停まる感じの気配がありません。
変なところで降りて途方に暮れるわけにもいかないので、とりあえず乗り続けました。
朝も早かったので元々バスの乗客が少なくて、乗り換えが盛んで主要なバス停が判断できなかったのもあります。
しばらくして「ディス イズ ラスト ストップ」と運転手に声を掛けられました。
バスは路線をぐるぐる回り続けているものだと思っていたので、終点という概念があったことにまず驚きましたが、そんなことを考えている場合ではありません。
「どこどこ大学に行きたいんですけどー…」と尋ねたところ、「よく分かんないけど大学はもっと前のバス停じゃない?戻りなよ。バックバック」みたいなことを言われました。
メンタルブレイク
とりあえず降りてみたら、そこはポートランドでも主要な観光地の “ダウンタウン” でした。
様々な店が集結しており、超絶デカい本屋、あのNIKEの実質本店みたいな店、シャレオツなカフェ、レストラン、土産屋、エトセトラエトセトラ…とにかく華やかな空間が広がる一方、少し奥まった所に行けば、ホームレスの寝床が並ぶ軽度なスラム街に早変わり、といった場所でした。
経済的に発展した空間のすぐ裏に、治安の悪い空間が広がっているのは地理学的によくある話だと聞いたことがあります。
ゴア王国の裏にグレイ・ターミナルがあるようなものです。
ONE PIECE読んでる人にしか伝わらないですね。
それはさておき、私はバスで終点まで行ってしまったので、結構奥まで連れていかれました。
朝早かったのであんまり店は開いてませんでしたし、地面にはゴミが転がってますし、当て所なく歩いていたら、ホームレスのおじさんに道路を挟んだ向こう側から何かメチャクチャ怒鳴られました。
未だに訳が分かりません。
怖くて小走りでその場を去りました。
その時にもう私の豆腐メンタルは崩れてしまって、比較的大きな通りに建っている街灯に寄りかかって、緊急用の携帯でスタッフに電話をしました。
初めて自分からヘルプを求めたわけですが、こっちは既に軽くパニックになっているので、上手く英語でこの状況を説明できませんでした。
「バスで乗り過ごして、今ダウンタウンにいて、クレイジーな人がいてスケアリーです」みたいなことを一生懸命喋ったんですが、「近くにバス停はあるよね?」と聞かれ、「多分大丈夫だから自力で頑張ってみて!オールオッケー」と電話を切られました。
まだ授業の開始時刻でもなかったですし、今すぐ助けがいる状況ではないだろうと判断されたんでしょうか。
私は拒絶されたように感じて泣きそうになったので、イヤホンを付けて大音量で「クレイジークレイジー」をかけることで平静を保ちました。
とりあえず、言われた通り自力でもう少し頑張ってみようと思い、ダウンタウンの中心地まで行ってスタバかマックを探そうと決意しました。
一旦Wi-Fiが使える環境に行きたかったからです。
しかし、道を歩いている時に、ものすごい剣幕の怒鳴り声が再び聞こえました。
なんと、目の前で警棒を持った警察と、ホームレスが何か言い合いをしている場面に遭遇したのです。
海外怖すぎ……
ホームレスが警察に殴りかかろうと腕を振りあげ、警察官2人はそれを避けてホームレスを抑え込みます。
そして、英語でわぁわぁと言い合いの喧嘩をしていました。
私の眼前3メートルで。
ビビり散らかしたので急いで引き返し、訳も分からないままとにかく歩き続けました。
1時間くらい。
ダウンタウンから離れ、歩き続けたものの、いまいち見覚えのある景色は見えてこないし、外国について早々に治安の悪さを目の当たりにして恐怖していたので心が折れており、シクシク泣きながら視界に入ってきたKFCに入ってチキンを食べました(お腹減ってたので)。
結構美味しかったです。
肉を食べて少し元気が出たので、再び緊急用の携帯を取り出しました。
そして「もうどこにも行けないので迎えに来てください」と全力で懇願しました。
その時は既に昼の11時を回っていましたし、授業に来ない私を心配する声が担当の先生から伝わっていたらしく、スタッフがすぐに迎えに来てくれました。
スタッフはヒンヒン泣く私に、「ホームシック以外の理由で泣く留学生は初めてだよ」と笑いながら喋りかけてきました。
そこで聞いた話によると、ポートランドは他の地域と比べたら相当に治安がいい場所で、確かにダウンタウンにはホームレスが多いが、彼らも危害を加えてくることはほとんどないそうです。
だから、警察との衝突も頻繁にある出来事じゃなく、「運が悪かったね」と言われました。
その一言じゃ済まないくらい私は恐怖したんですけど!
でも実際、そこから約一か月留学していた私でしたが、あの時以上に身の危険を感じたことはありませんでした。
ケバブの店の人に怒鳴られたり、バスの中で軽いエルボー食らったり、「お金持ってたらちょうだい」ってシンプルにたかられたり、「タバコちょうだい」って急におっさんに声をかけられたくらいでした。
まあそれなりに治安は悪いとは思いますが、ジョークで済む程度のものでした。
それよりも、バスの中で色んな人に助けられたり、土産物屋でめちゃめちゃサービスしてもらったり、道端で「その服いいね」とか「その鞄可愛いね」とか「観光客?」とか声かけてもらったり、バス停で待ってたら「このバスは到着が遅いわよ、これあげるわ」って時刻表を貰ったり、留学生だって名乗ったらおススメのスポットを教えてくれたり、とにかく親切にしてもらった記憶の方が強いです。
ポートランド、人が(基本)あったかくて本当におススメです。
色々あったけど私はポートランド最高に大好きです。
もう一回行きたいな…留学じゃなくて、観光目的で一週間くらい滞在したかった。
下校は成功
そんな感じで全然成長のない私でしたが、その日の下校前に、スタッフに呼ばれて私は職員室に向かいました。
そこで、相当丁寧に書かれた自宅までのマップ及びバスの時刻表、降りるバス停の名前のメモ、そしてバスの運転手に見せるための手紙まで貰いました。
その手紙には「彼女は留学生だ、どこどこ大学の者だ、家はここだ、このバス停で降りたい、云々かんぬん」といったことが書かれており、それを見せれば、バスの運転手はみんなすぐに頷いて、「降りる駅で声をかけてあげるよ」と親切に案内してくれました。
そうしてステイ先の最寄りのバス停で無事降りることが出来た私は、それ以降の地図がないことに気付きました。
「徒歩8分」としか書かれていません。
ここからは自力で帰れるだろうと思われたんでしょうが、私は正規ルートで帰ったことが一度もないので分かりません。
とりあえず、徒歩8分圏内のところをぐるぐる歩き続けていれば、いつかは家にたどり着くと踏んだからです。
しかし1時間経っても見覚えのあるあの家が見えてこず、どうしたものかと唸っていたら、仕事帰りのホストマザーとたまたま遭遇しました。
ホストマザーは自分が一人で家のそばまで帰ってこれたことに感動して、目に涙を浮かべて抱きしめてくれました。
その姿に、何だか私も感動して泣けてしまいました。
もう1か月分くらいの達成感が得られたような気分でした。
「はじめてのおつかい」じゃん
その日以降は、バスの運転手に手紙を見せたりして、派手な迷子になることもなく無事に家に帰れるようになりました。
当たり前ですけど、自分が完璧にルートを理解していなければ、どこにもたどり着けるわけがありません。
ただでさえ外国ですし、案内も英語で周りの人も日本語など喋れないので、ルートを自分で分かってないとどうしようもないです。
そんなこと最初から分かってたはずなんですけど、「どうにか自力で、人に迷惑をかけないで頑張りたい!」と思うと、どんどん事態は悪化します。
最初からスタッフに「どうしても道が分からないんです!教えてください!」と懇願するべきでした。
スタッフ、結構必死こいてお願いしないと全然動いてくれません。
危機的状況に陥った時は、軽率に手を合わせてお願いしましょう。
ここで一つ言っておきたいのは、“バスは時間通りに来ない”ということです。
次の日から、バスが何分間走り続けるかを測って、時間になったら降りるという作戦を思いついたんですけど、特にポートランドのバスの運転手は乗客とメッチャ喋るし、遅延がとにかく多いです。
平気で5分くらいバスを止めて乗客とお喋りしたりしてます。
これはポートランドだけかもしれませんが。
バスがバス停に到着する時間も結構ガバガバですし、何なら数分前に出発しちゃうこともありました。
時間の概念が希薄です。気を付けてください。
まとめ
・軽率に人に頼ろう
・バスは時間通りに来ない
やらかしまくった留学序盤の話もこれで終わりです。
次回がラストで、留学後半&まとめの話になります。
ようやく上手くいって良かったね!
こちらで妹の描いた実録漫画も見れるので是非。
(実録)アメリカ留学中に迷子で通報された時のことを漫画にしました
リプに続く pic.twitter.com/tbFwkbcRVI— 土鳩 (@ultimatedobato) March 24, 2020
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