留学失敗談【第二章:初日の下校 ~準備が甘い編~】

大学

これは私ではなく、2つ下の妹①の留学失敗談です。

これ以降は妹の文章がベースになっています。

はじめに

大学が手配してくれる短期留学プログラムに参加して、ド派手に迷子になった時の体験談です。

前回のお話はこちらからどうぞ。

今日は初日の出来事から書いていきます。

当たり前だけど日本語通じない

馬鹿みたいなタイトルが付いていますが、これ、本当に大変なことでした。

と言っても買い物や何やらは、言語に関して全然困りませんでした。

が、一番困ったのは、最初にホストマザーから登校の順序を説明してもらう場面でした。

まず現地に到着した私は、空港でホストマザーに迎えてもらい、車内で家から学校までの道筋を説明してもらいました。

それがまあ難解。

前回の話で述べた通り、私のステイ先から学校まではやたら遠かったです。

だから、登校する方法もたくさんありました。南側から回り込んで行くとか、少し遠いバス停まで歩いて行くとか、登校する道筋が5つ以上ありました。

ホストマザーが「色んな手段がある」と書いただけあります。

そして、その説明が本当に難しい。

と言うか、怒涛の勢いでした。

日本語にすると「7番のバスに乗った時は15番で乗り換えてね。9番のバスに乗った時も同じバス停で乗り換えてね。27番で乗り換えることも出来るんだけど、そうしたら51番で降りてね。で、南側の方へ20分くらい歩いてから図書館で左に曲がった先に別のバス停があってね、そこから乗った場合は27番まで乗ってね、27番のバス停はガソリンスタンドが見えたところだから。それで、15番から13番に乗り換えてね、」って感じです。

無理無理無理。

日本語でも訳分からない説明を、延々と英語で聞くのは本当に大変でした。

ホストマザーはすごく親切で、車で各バス停まで案内しながら説明してくれましたが、7番、15番、9番、27番……と、説明に出てきたバス停全部を紹介してくれるので、逆に混乱しました。

しかも、日本とポートランドの時差は約16時間。飛行機でロクな睡眠をとれなかった私は、眠たくて仕方ありませんでした。

この時、約1時間かけてバス停の説明をしてもらいましたが、マジで一つも頭に入ってきませんでした。

スマホのメモ機能を使ってメモはしてあったのですが、「7番から15番、9番?20分で図書館、左手にバス停 27番、ガソリンスタンド。13番」みたいな感じで、後から読み返しても何も分かりません。

そりゃそうだ、説明聞いてる時でさえ何も分からなかったんだから。

説明の中でホストマザーは「うちはしょっちゅう留学生を受け入れてるけど、みんな普通に登校できてるわ。ポートランドのバスは簡単なの」と言われました。

今ならこう思います。

過去の留学生、絶対にGoogleマップ見てた。

あの説明じゃ日本語でも多分私分からないもん。

そして問題がもう一つ。

留学プログラムはほとんどがそうだと思うんですけど、日本のスタッフは日本で留学の手続きをするだけで、留学中は基本的に現地の外国人スタッフが面倒を見てくれる仕様でした。

つまり、留学先には日本語で話を出来るスタッフがいませんでした。

この状況を誰とも共有できなくて、訳も分からないまま、私は登下校をすることになります。

現地に到着した初日は、時差の関係もあり疲労困憊だったので一日睡眠をとって終わりました。

次の日から学校に通うのですが、最初の登校はホストマザーが付いてきてくれました。

どうもスタッフ側に「初日は学校まで案内してあげて」と言われていたみたいです。

ありがたいなーと思っていたんですが、バスで登校している途中で「バスが遅れてて、これじゃ間に合わないから一旦家に帰って車で登校しよう」と言われて結局車で学校まで送ってもらいました。

ありがたいけど何も参考にならない。

その日の下校時、私は壮絶な迷子体験をすることになります。

初日の下校

ホストマザーもいない、バスについて何も分かっていない状況でしたが、私はその瞬間まで大した危機感を持っていませんでした。

バスには同じプログラムに参加する日本人が大勢いたので、私も付いて行けば何とかなるんじゃないかな、くらいに思っていたからです。

しかし当たり前ですが、みんな家の場所は違います。

しかも生徒はみんなスマホ片手に、Googleマップで案内を見ながらバスに乗っていました。

私はその姿を見て、ようやく危機感が湧きました。

何故なら家までの帰り道を何も分かっていないからです。

とりあえず人が一番たくさん降りた駅で降りて、「家の方向が近い」って紹介された2人の女の子に付いていきました。

しかし、彼女たちも早々に分かれてしまいました。私の家だけやけに遠いので、途中から完全に一人になりました。

ここで、私の留学先であるポートランドのバスがいかにクレイジーか紹介します。

バス停の案内がない

日本のバスは、止まらなくても上のモニターに「次は ○○」とか案内が出ますよね。

運転手も毎回案内はしてくれると思います。

しかし、ポートランドのバスは、毎回案内はしてくれません。

大きなバス停で乗り換えがある場所とかは案内がありますが、あまり人が降りないバス停は全く案内してくれないのです。

そこでどうするかと言うと、窓の外を見て、自分が降りる場所を判断して降りなければならないのです。

だから、ホストマザーは「ガソリンスタンドが見えたら降りる」とか、「ドーナツショップが見えたら降りる」とかいう案内をしてくれていました。

雑な自分のメモを見ながら、ドーナツショップが見えたら降りる、ドーナツショップが見えたら降りる!と、一人で必死になってバスから外を見ていましたが、ここで重大な問題が発生します。

結露でバスの窓が真っ白

当時は雨期。

その上、外は冷え切っていて、窓は真っ白でした。

案内がないから、景色を見ながら自分が降りる駅を判断しなければならないのに、その景色が全くこれっぽっちも見えない。

窓を手で拭きながら景色を眺めていましたが、片側の景色しか見えませんし、少し拭くのをやめるとすぐに曇る有様でした。

結露が強すぎる。

みんな親切

もう自分じゃ降りる駅が判断つかないと感じたので、私は結構早い段階でバスの運転手に声を掛けました。

「自分は日本の留学生で、ホームステイ先に帰りたいんだが、降りるバス停がよく分からなくて。ドーナツショップが窓から見えたら降りろと言われたんですが、どこか分かりますか。」

すると、人の良さそうなバスの運転手はこう答えました。

「ドーナツショップはそこらじゅうにあるから、よく分からない」

詰みました。

確かに後で調べたところ、ポートランドは、ドーナツショップめちゃめちゃ乱立してるんですよね。

何も参考にならない。

しかし、バス停の運転手と一生懸命話していたら、乗客の一人が声をかけてくれました。

マクドナルドのデカい紙袋を抱えて、バスの中で堂々とバーガーを食らっている、匂いがすごい肥満体系の兄ちゃんです。

彼は私たちの話を聞いていたようで、スマホを使ってグーグルマップで家までの道を調べてくれました。(最初はバスの道沿いにあるドーナツショップを調べてましたが、絞れないのでやめました)

その際、私はステイ先の住所が書かれた書類を見ながら、家の近くにある体育館の住所を入力してもらいました。(ステイ先の住所を見た目がちょっとアレな男性に正直に教えるのはどうかと思ったので)

すると、「市が違うよ。このバスじゃ着けないよ」と言われました。

そうなんです、確かに私のステイ先だけそもそも市が違ったんです。

しまったな、と思いながらその男性に道を伺ったところ、「次のバス停で降りて56番で乗り換えなよ」と教えてもらったので、お礼を言って、56番のバスに乗り換えました。

しかし、それ以降の道は全く分かりません。

「次のバス停で降りな」と言われてしまったので慌てて降りたため、深く聞く暇がありませんでしたし、56番のバスは、ホストマザーから全く聞いていないものでした。

もう本当にどうしようもない、そう感じた私は、とりあえずバスを降りました。

そして思いついていた、ある作戦をとることにしました。

ある作戦とは

ポートランドにある各家には、それぞれ番号が振られていました。

表札みたいな感じで、家に「315」などと番号が書かれているのです。近所に並ぶ家の壁には「320」「325」「330」…と言った感じで番号が振られており、5の倍数で数が増えているようでした。

この法則を見つけて私が思いついた作戦とは、

家々の番号を辿れば、いつかは家にたどり着くんじゃないか作戦です!

小学生か。

とにかく他に為す術もなかったですし、とにかくバスを降りた私は目の前の家の番号を見ました。私の家は「315」番だったので、順繰りに辿っていけばいつかは帰れるはずです。目の前の家の番号は……

「2015」でした。4桁もあんの⁉

驚いたものの、数字が若くなる方向にバスを乗り継いでいき、番号が離れたら走って前のバス停まで戻ったりして、どうにかこうにか315番を目指しました。

所要登校時間が90分なのに、このとき既に3時間は経過していました。

サラッと言いましたが、本当に過酷な時間でした。

バスをしょっちゅう乗り換え、走り、バスを待ち、そんな感じだったので、外にいる時間がかなり長く、まだ2日目で服を買う余裕もなかったので、私は雪が残る町を七分袖でさまよっていました。

しかも、雨が降っています。

寒くて寒くて、ずっと膝は震えていたし、指先の感覚はなくなっていました。

天気予報を調べることも出来ないですし、油断して傘を持っていかなかったので、全身に雨を感じながら、とにかく動き続けました。

途中でマックとかスタバとかを見つけたら、一旦避難してWi-Fiを使って帰り道を調べよう。

そう思っていたんですが、道中全く見かけませんでした。

番号を辿る作戦のさなか、誤って山道に入ってしまい、バスもほとんど来ない状況に一人残されたとき、流石にこれはどうしようもないと感じて、現地のスタッフに連絡をする決意をしました。

支給された携帯

現地に行く際、スタッフから2つの物を支給されました。

1つ目は、現地で使えるバスの定期券。

2つ目は、現地で使える携帯電話です。

緊急事態の時のために、現地スタッフと24時間繋がる携帯電話が最初に支給されました。

アルファベットしか打てないし、パカパカしない、やけに重くて分厚い前時代のものでしたが、海外で使える携帯電話はこれしかありません。

今こそ使う時だ、と携帯電話を取り出してビックリ。

電源がつかないのです。

後から聞いた話ですが、電話のマークがついたボタンを長押しすると電源が付くそうです。

分かるか!

私は初めて手にした携帯がスマホだった世代の人間なので、使い方が全く分かりませんでした。

使い方の解説書もなければ、説明もなかったので、結局その時は電源を入れることさえ出来ませんでした。

ちなみに、帰宅後に携帯の電源の入れ方を聞いて、入れてみました。

メールの着信が30件ほどあったからです。ホストマザーとスタッフが、連絡を取ろうと頑張ってくれていたみたいです。

ていうかそもそも、携帯電話って電源を入れてないと電話が通じないんですね(当たり前)。

迷子の最中は「電話かかってこないし(泣)」みたいな感じでしたけど、全然そんなことありませんでした。

むしろ、かけまくってたみたいです。

その時は電源を入れることが出来なくて、電話を諦めたので、そのまま山道を走って町に向かい、そこから走って再び番号を辿りました。

無事帰宅

走り続け6時間程経過し、ついに道沿いに立つ家の番号が300番台になりました!

これは間近だぞ、と元気になった私は全速力で走って「315」を目指します。

そして、ついに到着……!

なんということでしょう。

「315」番の家は、全く見覚えのない姿をしていました。

ステイ先の家は、まるでシルバニアファミリーの“灯りのともる大きなおうち“のような外観をしていたはずです。

ところがどっこい、目の前にある家は、味気ないコンクリートの一軒家でした。

完全に路頭に迷った私は、そのままフラフラと歩き続けました。

次に見つけた店に入って、お金を払って電話を貸してもらおう。

そう決意していましたが、田舎なので全然店がなくて、もうその辺の家を訪ねて電話を貸してもらおうかな、と考えていたときでした。

「315」から順繰りに辿っていき、「1」をさらに進んだ先で、番号がリセットされていたんです!

また「1」の家庭があり、道沿いをどんどん進んでいくと、「10」「30」「100」…と、新しいおうちが姿を現しました。

そう言えば、私の家だけ市が違いました。

市が違うと番号がリセットされるのかな?と考えた私は、希望を胸に、再び「315」を探しました。

しかし、「310」と「320」は見つかったのに、「315」だけが見つかりません。

マジで今度こそ絶望的な気分になりましたが、これ以外に手掛かりはありません。

300番台の家庭をウロウロしていたら、電信柱の向こうに、一本奥まった道を発見。この時、夜の8時台で、辺りは結構暗かったですので、この道を見つけれたのは奇跡に近かったです。

その道を進み、ついに、ついに!

「315」番で、間違いなく見覚えがある家を発見しました!

電撃に打たれたような感動さえありました。

「ただいまー!」と絶叫して扉を開けたい気分でしたが、この日はまだホームステイ2日目で、そこまで“我が家”感はありませんでした。

だからおずおずと扉を開けて、「私です、遅くなってすみません」と口にしました。

無駄に大冒険をしてきた私を見て、ホストマザーはムチャクチャ驚いた顔をしました。

それから「寒かったでしょ」と暖炉の前まで案内してくれて、毛布を渡してくれました。

そして、「どうして電話に出なかったの」と叱られました。電話が使えなくて、と伝えて謝ると、「遅いから心配してスタッフに連絡しちゃったわ。あなたから無事を伝えてちょうだい」と言われました。

ホストマザーのスマホからスタッフに電話をかけると、向こうから驚きの声が上がりました。

それから、「連絡がつかないから、警察に通報しちゃったよ!」と言われました。

「白い服を着てて、小柄な黒髪の女の子で、リュックは黒くて…」と私の身体的特徴を伝えていたまさにその時に、私が電話をかけたみたいです。

電話の向こうで、スタッフはあまりのタイミングの良さに笑っていました。

笑いごとじゃない。

こんな感じで、全身ビショビショで冷え切っていたし疲れ切っていたので、その日は電話の使い方だけを教わるとすぐに寝ました。

結果、次の日も迷子になるんですが、とりあえず初日の下校の教訓を。

【最重要】マジでスマホは使えるようにしておこう
・緊急用に携帯電話が渡されていたら、使い方をちゃんと聞こう
・傘を持て
・音楽アプリを入れておこう
・周囲の人は親切だから、積極的に道を聞こう
・スマホが使えない場合、早々にマックやスタバ等、フリーWi-Fiがある場所に行き、一呼吸おいて調べよう

「音楽アプリを入れておこう」というのは、バスを待ったり、走っている最中に、雨音しか聞こえないと泣きそうになるので、そういう時に好きな音楽を聴けるようにしておくと精神状態が全然違うと思ったからです(Wi-Fi契約してないんなら、オフラインでも聞けるサービスを利用するか、好きな音楽をあらかじめ入れておきましょう)。

私はスマホの中に「クレイジークレイジー」(アイドルマスターシンデレラガールズに登場するキャラクターである一ノ瀬志希、宮本フレデリカのユニット曲)しか入ってなかったので、延々とその曲だけをリピート再生していて気がクレイジーになりそうでした。

未だにその曲を聞くと、当時のことを思い出してうすら寒くなります。曲は最高なのに。

振り返ってみると、自分でも、当時は相当テンパって馬鹿なことをしていたなぁと思います。

多分、バスの中で会った、マックの袋を抱えてた肥満体系のバーガー食ってる兄ちゃんに「最寄りのマックはどこですか」って聞いてればよかったのかな、と今なら思います。

そうでなくとも、飲食店がある都会にいるうちに、そういう店に入って電話を借りていればよかったな、と思います。

海外で迷子になったときは、とにかく連絡を取ることを第一に考えるべきだと思いました。

ですが、何だかんだこの日は自分で帰れたし、スタッフさんも面白がっていたみたいなので()、自分の中では達成感すらありました。

そして何の根拠もないけど、明日もまあ何だかんだ同じように帰れるだろう、と思っていました。

結果、次の日はもっとエライ目に遭うことになります。

まとめ

・スマホは絶対使えるようにしておこう
・迷子になったら連絡をとることを第一に考える

もっとエライ目に遭った次の日の話は、また次回に。

ゴハン
ゴハン

てか私の妹が海外を舐めすぎなだけでは?

謎の金髪
謎の金髪

それ前回も言ってたよ

こちらで妹の描いた実録漫画も見れるので是非。

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