はじめに
家事、したくないですよね。
できる限り家事時間を減らしたい、そう思っている方も多いのではないでしょうか。
今回は統計データをもとに、どうしたら家事時間を減らすことができるのかについて考えていきたいと思います。
結論からいうと、この2択になります。
・生活水準を下げる
えっ、時短家電とかあるじゃん
そう思った方もいると思いますが、恐らく意味がありません。
データから見ていこうと思います。
家事時間の変化
まずは、こちらのグラフをご覧ください。
図1:家事時間の時系列変化(男女別)
こちらは、NHK放送文化研究所の『2015年国民生活時間調査』から引用したデータになります。
平成2年以前が白抜きになっているのは、そこで調査方法が変わったためです。
数値を直接比較することはできませんが、長期的変化を見るため、載せてあります。
上のグラフを見て、何を思いましたか?
男もっと家事しろや!
今回はジェンダーのお話がしたいわけではないので、世帯と考え、男女の家事時間を合計してみます。
図2:家事時間の時系列変化(合計)
あれ、昭和45年から家事時間あんまり変わってない……?
そういうことです。
調査方法が変わっているので、これも直接比較はできませんが、昭和35年から家事時間にはあまり変化がないという調査結果もあります。(参考:内閣府男女共同参画局『平成17年度版男女共同参画白書』)
正確な直接比較はできませんが、昭和35年から平成27年までの期間で家事の時間が30分程度しか減っていないのは興味深いですよね。
家電の普及率
昭和40年前後は高度経済成長期です。家電などが急速に普及しました。
図3:白物家電普及率
上の図は、内閣府男女共同参画局『平成17年度版男女共同参画白書』の〈主要耐久消費財普及率の推移〉から、家事の時短への影響が大きいと考えられるものだけをピックアップしたものです。
上の図と昭和35年から平成27年までの期間で家事時間は約30分程度しか減少していないという調査結果を考えてみましょう。
家電は家事時間を減らさないという直感に反した事実が分かると思います。
電気洗濯機の前って洗濯板とたらいか手回し洗濯機ですよ……?
そして、昭和50年頃までは二層式洗濯機が主流でした。
それと現在主流である脱水まで行ってくれる全自動洗濯機。
家事の時間が減らないわけがない、そう思いませんか。
何故家事時間が減らないのか
これに関しては、労働の贈与交換と家族、ジェンダー視点からの家事と家族などなど様々な議論があります。
一番大きい要因とされているのは、「工業化によりヒトの生活水準が向上した」ということです。
家事ではありませんが、日常生活で分かりやすいものとして、洗髪を例にあげて説明します。(参考:花王『洗髪の歴史』)
平安時代の女性の絵を見て髪の毛洗うの大変そうと思いますよね。しかし、平安時代の洗髪頻度は年に1回ほどだったとされています。まあ年1なら、大変でもって感じですね。
日本で洗髪の頻度が高まり始めたのは戦後。戦後は週に1度ほど。昭和30年頃で5日に1度ほど。いまのようにほぼ毎日洗髪するようになったのは1990年代半ばです。
家庭に内風呂が普及し、液体シャンプーが登場することで洗髪頻度が高くなりました。
これが家事においても言えます。
昔は週に1度だった洗濯の頻度が、今では1日に2回行う人もいるくらい飛躍的に増え、昔は一汁一菜で十分だった食事が、時代とともに一汁三菜になったように。
それだけでなく、時短家電に伴い生まれる新しい家事もあります。
ロボット掃除機が動くために床を片付けなくてはならなかったり、水拭きロボットを使うために掃除をしなくてはならなかったり。食洗器にも予洗いしてうまく詰めるという作業があります。
何が言いたいかというと、家電は思ったより、家事の時間を減らしてくれないということです。
そして、それが何故かというと人間はより良い生活を求め続けるから、ということになります。
最近はSNSの普及に伴い、部屋の中をオシャレに見せる、料理をオシャレに作る需要が増えています。これもそのひとつです。
それならどうしたらいいのでしょうか。
ひとつは生活水準を下げることですね。これは分かりやすいです。
平成初期の家事時間の減少は何故か
図2(再):家事時間の時系列変化(合計)
もう一度家事時間の時系列変化のグラフを見てみましょう。
昭和中期、平成中期以降はあまり変化がありませんが、平成初期あたりで減少が見られます。
これの理由も色々と考察されているので、気になる方は論文等漁ってみてください。
色々ありますが、ひとつ言われているのが、ライフスタイルが変化し、〈中食〉への支出が急増したことです。
(参考:総務省統計局『統計が語る平成のあゆみ』〈4-1 その他 ライフスタイルの変化〉)
まとめ
・家電が進化しても人間の生活水準がそれに伴い上昇するため、家事時間は変化しない
・家事時間を減らすには「家事の外注化」か「生活水準を落とす」しかない
ちなみに私はある家電メーカーさんに内定を頂きましたが、その面接ではこういうデータから、家事の時間を減らすことを目指しても意味がないので、家事の時間を楽しいと思ってもらえる家電がつくりたい、という話をしていました。
そういう分野を専門にしているので。
いつかつくれたらよろしくおねがいします。
コメント